前回、ゴール王を操るギガメス大臣を竜騎士ジャンプで成敗したルーネス一向は、命を落としたゴーン王の息子、アルス王子の自立に立ち会うことになりました。目を瞑りながら振り向く王子は、ルーネスたちに感謝の意を述べるとともに、自分が父親を疑っていたことを吐露しました。すかさずアルクゥが「そんなことはない!王子は父上を愛していた!」とフォローに入ります。この二人の関係がさらに親密になったように思われます。「ありがとう、アルクゥ。私は父上の後を継ぎサロニアを治めようと思います。それが父上の遺志です。みなさんのおかげでギガメスを倒すことができました。本当にありがとう。」と辛い状況ながらも力強い意欲をみせるアルス王子。果たして年はいくつくらいなのでしょう。この先、若い王ということで巨大な国家の運営に際していろいろな困難が待ち受けているでしょうが、城内での評判も良さそうなので、しっかりサポートを受けていけば大丈夫でしょう。アルクゥが「しっかりね!アルス王!」と王子から王へと呼び方を変えたあたりも一国の歴史が変わったことを象徴していました。
さて、ギガメスの企みが起こった寝室を出ると、既に国内には新王誕生の報が広まっているらしく、そのサポートをした4人も歓迎を受けているようでした。新体制に移行した結果、閉鎖されていた様々なサロニアの施設が開放されたようですので、いろいろ情報収集と参りましょう。まずは城内から、「サロニアの技術力は世界一だ。」というシュトロハイム大佐のようなセリフが聞かれました。中でも飛空艇に関して力が入れられているという話は他の町でも耳にしました。続いて、「アルス王子はサロニアを愛し、平和を取り戻すためにたった一人で戦ったのだ。」という王子の武勇伝を語るものがいました。まだ「王子」と呼んでしまうあたりはご愛嬌というところでしょう。先王の異常行動の原因がどこまではっきり伝わっているか謎ですが、先王とのギャップでアルス王子のカリスマ性が大分高まっている様子です。しかし、ギガメスを倒したのがアルス王子の功績となっている部分は、4人としては釈然としないものがあります。アルスの性格上、そんな嘘をつくような子ではなさそうですので、国家の広報部による宣伝行為なのでしょうね。北朝鮮でも新しいトップが誕生したら、彼の求心力を高めるために「衛星ロケット」を飛ばしてみたり、核実験を行う予告をしてみたり、派手にいろいろやっていますが、それと同じ感覚で国民に威光を届けるような行為が代替わりにはよくみられます。一般の会社や大病院でも代替わりがあれば、対抗勢力の左遷のような派手なイベントがありますね。
さて、さらに探っていると、興味深い発言をする男がいました。「私はこの国の砲撃手。先の戦いでは飛空艇を撃墜したこともあるのだ。」・・・これは解釈がわかれるところがあると思いますが、「先の戦い」が指すものがゴーン王の乱心による内戦を指すとしたら、彼が撃ち落とした飛空艇が我らがエンタープライズ号だった可能性が出てきます。海賊の連中から頂戴し、シドに改造してもらった飛空艇・・・いろいろな思い出が詰まっていました。別にこの砲撃手が直接悪いというわけではありませんが、何だかやりきれない気持ちです。っていうか、飛空艇のない状況だと、浮遊大陸に帰ることも、海を渡ることもできません。一介の狙撃手がどうこうできる問題ではありませんので、ここはサロニアに賠償を要求したいところです。しかし、サロニアの領空と思われる空を、それも紛争地域であることが知れ渡っている場所で飛行機が撃ち落とされたとして、サロニアに賠償責任はあるのでしょうか。国際的な機関や国際法というものが整備されていそうもないこの世界において、戦時賠償はケースバイケースでしょうから、ここらへんは交渉次第ということになります。うまくアルス王を味方につけ、有利な展開に持ち込みたいところです。万が一、こちらの要求が通らなかった場合、泣き寝入りするのも癪なので、アルス王には悪いですが、光の戦士の暴力によるサロニア落とし作戦を練ることになります。
さらに進んで机が多く並ぶ部屋に入るとサロニアのエンジニアを名乗る男たちがいました。「お話は聞いております。古代遺跡で発見された飛空艇ノーチラスを使ってください。」とこちらが要求するまでもなく代わりの飛空艇を用意してくれるようでした。アルス王、なかなかの手回しの良さです。これはひょっとするといい王になるのかも・・・。今後、困ったことがあったらアルクゥを前面に立ててアルス王におねだりするのもいいかもしれません。「さぁ、みんな運ぶぞ!」とエンジニアの一団はどこかへ行ってしまいました。そんな中に一人、おいてけぼりを食ったエンジニアが「あれれ?みんなどこだぁ?」と目的を見失っていました。おそらくサロニアが国家予算を多く投入しているであろう飛空艇のエンジニア集団ともなれば、国内外問わず知力体力の充実したいわゆるエリートで構成されているはずです。そんな中にもこんな凡人がいるのをみてしまうと、ホッとするような残念なような不思議な気持ちになります。多分、この国の権力者あたりが、息子の経歴に箔をつけるために無理やりこの部署にねじ込んだものだと思いますが、まぁ、実力が伴わないので周囲から歯牙にもかけられない悲しい扱いを受けているといったところでしょうか。この逆境をはねのけるべく励むも、親の七光りにすがり続けるも本人次第なので、頑張ってアルス王を支えられる人材に育ってほしいところですが、とりあえず、こいつには新しい我らが船・ノーチラスには触らずにいてほしいです。
トンテンカンと鎚を振るう音が聞こえてしばらく立つと、エンジニアたちが戻ってきて、ノーチラス号を城の外に置いてきたと報せてくれました。この飛空艇は従来のものよりも性能が高く、ダルグ大陸の風にだって負けない推進力をもっているとのことです。確か、世界地図の南の方の岩に囲まれた大陸がそんな名前で、切り立った峡谷からでないと内部にアクセスできなかった気がします。エンタープライズでは逆風に押し流されてしまったのでした。ノーチラスならそんな風にも負けないと・・・エアロパーツでもついているのでしょうか?
ノーチラスについてもうちょっと聞いてみましょう。なにせ高性能なマシンらしいですから、その扱いも難しいかもしれません。ノーチラスは古代遺跡で掘り出された後、サロニアの天才技師が復活させた代物なんだそうです。古代文明もすごいですが、その文明を復元した天才もすごいですね。はたして、現代の文明が生んだ薄型液晶テレビやパソコンといった道具の数々を、未来で文明レベルの劣る人が地層から発掘して活用してくれることがあるでしょうかね。それからその天才技師は次の課題として海の中に潜ることを目論んでいたそうです。そういえばノーチラス号といえば、飛空艇よりも潜水艇としての方が知名度が世界的に高いですもんね。ジュール・ヴェルヌの「海底二万マイル」でネモ船長に作られた潜水艦がノーチラス号でした。ノーチラスとは「オウムガイ」のことらしいです。あの綺麗な螺旋を描く貝ですよね。よく黄金比の話で引き合いに出される自然界にみられる黄金比生物のあいつです。
でも、ノーチラスは海上を進むところまではできていたけど、天才技師が飛空艇で飛んでいる間に世界は闇に覆われてしまい、潜水機能についてそれ以上の進展はなかったそうです。天才技師の安否をこの国のエンジニア一同気にしているようですが、う~ん、ひょっとしたらその天才技師のことをルーネスたちはよく知っているんじゃないかという気がしてきました。確か、ルーネスたちも飛空艇で飛んでいる最中に世界が闇に飲み込まれた組だったはずです。そのときの同乗者に飛空艇大好きおじさんがいたのですよね。ここでシド=サロニアの天才説が浮上します。それどころか、ルーネスたちの出身もこの辺の地域の可能性が出てきました。まだ、憶測の域を出ませんが、サロニアという土地と何か因縁があるのであれば、アルス王を助けた今回の出来事もなんだか奇妙な偶然でしたね。