リチャードがその身を挺して新生パラメキア皇帝の魔力から脱出させてくれたおかげで、飛竜の背に乗ってフリオニール・マリア・ガイ・レオンハルトの4人はフィン王国へ戻ってくることができました。リチャードが皇帝に挑んでいった背中だけが網膜に焼き付いています。彼が生存している可能性ってどんなものなんでしょうか。一応、最後の竜騎士の意地を見せて見事皇帝を打ち倒してくれるなんてこともないわけではないと思いますが、この流れでリチャードにそんなおいしいところが回ってくるとは思えないので、まぁ、傷の一つも負わせてくれているというのが妥当な線でしょうか。勝つのは無理でもせめて生きていてほしいです。ディストの親子のためにも。闘技場の地下にでも幽閉されているのであれば、ポールさんと一緒に助けに行く手立てもあるのですが。
そんなわけで尋常ならざる様子で飛竜から降りてきた4人をみたヒルダ王女から状況説明を求められます。なんといってもレオンハルトを説得しにいくと出て行ったら、本当にレオンハルトを連れて来ちゃったわけですから、フィンのトップとしては何らかの判断を下さないわけにはいきません。レオンハルトはフィンの法律上では極刑を免れないようなことをやっているわけで、どんなにフリオニールの功績を盾にかばったとしても恩赦は考えにくいところです。
そんな中、フリオニールは言葉を選びながらことの次第を慎重に報告します。まず、皇帝が甦ったというインパクトのある話題からいきなりぶつけられたのでヒルダ王女も卒倒寸前。大戦艦で爆撃されたり、竜巻で町を潰されたり、皇帝にはいくつものトラウマを生みつけられてますから、せっかく取り戻したフィンの城をまた失ってしまうんじゃないかなんてことすら脳裏によぎります。スコットや父親(国王)もあの皇帝の政権下で失いました。ヨーゼフ・ミンウ・シドといった国を支える人材だってたくさんあの皇帝には奪われました。その皇帝が復活したというのです。
続いて、マリアがリチャードの死を報告します。最後の竜騎士は国王の遺言にもあった通り、皇帝打倒の切り札でしたからヒルダ王女はダブルショック。この発言には自分もびっくりです。リチャードの死亡があっさりと告げられてしまいました。自分の中では生存に一縷の希望を残していたのに・・・ミンウさんが死んだときにも、シドが死んだときにも、これ以上の犠牲者は出すまいと考えていたフリオニールとしては、逆に命を救われてしまうという失態です。レオンハルトがいなければ飛竜の定員的にリチャードを殺されずに済んだかも・・・なんてことも考えてしまいそうです。いや、まぁ、リチャードは竜騎士の名誉のために戦って散ることを自分で選んだわけですが、レオンハルトがあの場にいたのといないのとではまた判断が違ったかもしれません。
マリアも「こんなのもうたくさん」と、犠牲者たちを思い忍んでいます。
そんなマリアの様子をみて、レオンハルトが犠牲者たちと皇帝の魔力の強さの因果関係を強める発言をします。皇帝を倒さない限り、犠牲者は増えるよと、全くもってどの口で言っているのでしょう。新皇帝を名乗ってフィンの兵士にさらなる蹂躙を加えていたのは紛れもなくレオンハルトその人なんですけど。レオンハルト的にはマリアを慰めるつもりでの発言だったのかもしれませんが、このフィンの領地内での発言としては不用意でした。空気がイマイチ読めない男なのかもしれません。
しかし、空気を読まないことではさらに上を行くのがこのフリオニールです。どさくさに紛れてヒルダ姫に「レオンハルトの反乱軍加入」を要請しました。突然のことにヒルダ王女も、レオンハルトもビックリです。仮にもダークナイトとして反乱軍を絶望においやってきた男・レオンハルトを誰がすんなりと反乱軍に加えてくれるというのでしょう。大体、レオンハルトにしたって今さらフリオニールとつるんで仲良く冒険の旅に出られる心境じゃないでしょう。「こいつ、ガキの頃からオレの意見なんか一つも聞かなかったな、そういえば。」なんて昔のことをちょっと思い出しちゃったりしそうな暴走ぶりです。しかし今、王国は皇帝への対抗策を急遽考えなくてはならない状況です。意外とこのフリオニールのトンデモ発言が通る余地があるのかもしれません。レオンハルトのダークナイトとしての過去に目をふさげば、パラメキア帝国を統べるほどの実力者です。戦力としては申し分がありません。それだけではなく、敵側にいた人間ですから、パラメキア皇帝の弱点的なものについても情報を握っている可能性はとても大きいです。一方、レオンハルトにしてみればフィンの城の真っ只中で周り中、本来なら敵だらけです。捕まって極刑だってありうる状況下で反乱軍に一時的に加担することは、この場を切り抜ける一つのチャンスにもなります。さらに、レオンハルトにしてみれば、ノコノコと復活したパラメキア皇帝は、一度手にした皇帝の座を再び手に入れるための障壁でしかありません。既に皇帝の座をおわれた身ですから、反乱軍の力を借りずしてまた一からパラメキア皇帝を打倒するのは至難の業といえるでしょう。もちろん、マリアを前にしてラオウとはいえ心の機微というものはあります。お兄ちゃんとしていいところを見せたいというフーテンの寅さんのような気持ちも多分にあります。このフィンとレオンハルトの利害の一致をいち早く計算したのかどうかはわかりませんが、フリオニールがポッと言い放った言葉は意外と的を射ていたような気もします。単純にレオンハルトと肩を並べて、昔のようにやんちゃしたかったという本音も見え隠れしますが、フリオニールはレオンハルトの命を助け、フィンの未来を切り開く方策を打ち出したということになります。
ところで、「反乱軍」という単語が気になったのですが、フィン城を奪還した時点でてっきり反乱軍という組織は解散したのだと思っていました。反乱っていうからには、既存の勢力(パラメキア)に対する下部組織の抵抗という位置づけで反旗を翻していたんじゃないのでしょうか。フィンが一応領土を取り戻して国としての体勢を持ち直したら国同士の対等な関係での争いになったと勝手に思ってました。フリオニールはまだまだ「反乱軍のリーダー的存在」という肩書きなんですね。そういえば勲章とかもらってないし。正規軍の将軍として兵隊の一つや二つまかせてくれれば、もうちょっと楽にパラメキアも攻略できるんですけどね。
さて、そんなフリオニールの申し出を無碍にもできず、苦渋の末、ヒルダ王女はレオンハルトの反乱軍入りを許可してくれました。これは反乱軍の士気にも影響することですので、レオンハルトがダークナイトだったことについては緘口令を敷いておきたいところです。しかし、ゴードン派の工作によって城中の人間が既にみんなレオンハルトの正体を知っていたりして。皇帝を倒した後のダンスパーティーの席で、伝令係が大声で触れ回ってましたしね。針のむしろに座っているように、英雄だったはずのフリオニールに、冷たい目線が降り注ぐことでしょう。兵士の中には家族や大事な人を大戦艦の爆撃で失った人もいたことでしょう。その大戦艦を指揮していたのは、フリオニールの隣にいるレオンハルトです。ヒルダ王女もこの点についてはフリオニールをフォローしきれませんよ。自分で言い出したこととはいえ、レオンハルトを監督することになったこの展開はちょっと辛いものがあります。レオンハルトにしたって、いつ背後から刺されるかわかったもんじゃないでしょうから、さっさと城の外に出たいところでしょう。ただ、一人マリアだけは満面の笑みで兄の帰りを喜んでいそうです。一番空気の読めないのはこの女ということになります。
さて、具体的にどうやってパラメキア城に攻め入りましょう。いや、もうパラメキア城じゃなくパンデモニウムという名称なんでした。接頭辞の「pan-」には「すべての」という意味合いがありますから、パンデモニウムは「総悪魔府」とでも勝手に意訳しておきましょう。飛竜で逃げてきたのだから飛竜で行けそうなもんですが、多分ニョキニョキ生えたパンデモニウムの塔の方に皇帝も移動しているので、飛竜でも容易には近づけないのでしょう。なんか兵士の話によるとパンデモニウムっていうのは地獄に根ざしている幻の城だから、この世にあってこの世にないんだそうです。そんな矛盾したあやふやな存在ですから、生半可な交通手段ではアクセス不能なわけです。
渋るレオンハルトの頭を無理やり下げて、ヒルダ王女のお知恵をお借りすると地上に現れている皇帝の操るモンスターは、ジェイドという名の通路を介して地獄からやってきているそうです。だから、地獄から生えているパンデモニウムに行くにもこの通路が使えるんじゃないかという提案をいただきました。あっさり言ってくれましたが、これは地獄へ落ちろと同義です。
さて、ジェイドといえばキン肉マン二世の超人仲間にそんな名前のやつがいましたね。ブロッケンJr.を師と仰ぐ緑色の超人です。もちろんベルリンの赤い雨がフェイバリット(得意技)です。最近、師匠に負けず劣らずの負け役が板についてきてしまいましたが、女性には人気があるという設定のようです。・・・ってことは、造語ではなく元々意味のある言葉ということですよね、ジェイドって。というわけで辞書を引くと「翡翠(ひすい)」という意味なんだそうです。宝石の一種ですね、緑色の。ブロッケンJr.の弟子のわりにはかっこいい名前をもらったものです。
続いて、レイラさんにジェイドのことを聞き込みます。どうもジェイドはミシディアにあるらしく、ミシディアの東の海峡のあたりに死の世界につながるともっぱらの噂の泉があるのだとか。さすが、世界を股にかけて金銀財宝を漁っていた海賊です。こういった情報はお手の物なんでしょう。
確かに地図をみるとミシディアの東は隣の大陸と近接していて、海峡の地形を作り出しています。多分、この世界での呼び名があるのでしょうけど、仮にミシディア海峡とでも呼んでおきましょう。こういう場合、海峡を通り抜ける際に船から通行税を徴収する国もあるかと思いますが、フリオニールが以前南の島に行った時には、通行時に特に何も言われませんでした。ミシディア領とパラメキア領の境界でもあるので、政治的に難しいところなのかもしれません。
レイラさんの話で十分でしたが、一応ゴードンの顔を立てておいてやります。ゴードンはカシュオーンの昔話をひいて結構乗り気な様子です。ジェイドはミシディアの小さな泉にあるとかなんとか。・・・ん?海峡じゃなくて魔法都市・ミシディアの中に泉があるのでしょうか?わかりづらいです。でも、これはゴードンが悪いわけではなく、ミシディアという名詞が漠然としているせいなのです。
過去にミシディアあたりで封印を解く作業をしていたときにも、このミシディアという単語でちょっと混乱したことがあったので、以前から気になってはいたのです。自分の頭の中では「ミシディア=魔法都市」という刷り込みがあったので、都市としてのミシディアの周辺一体もミシディアと呼ぶことになかなか気付かなかったのでした。広範囲なミシディアを呼ぶときは「ミシディア地方」とか呼んでくれると通りがいいのに。あそこら辺の建物などに「ミシディアの塔」や「ミシディアの洞窟」という名前がついていたので、やっとこの一帯を「ミシディア」と呼ぶことに気がつき、一気に理解が深まったのを思い出します。で、ゴードンも多分、ミシディアという単語を「都市」ではなく、「地方」という意味で使っていると思われます。まぁ、一応ミシディア市内にも水を湛えていた場所があったはずなので、一度顔を出したいとは思います。
情報収集を終え、レオンハルトが居心地が悪そうなのでさっさと城の下に降りていきます。兵士たちの噂話もあれこれ聞こえてきますが、必要な情報以外はシャットアウト!耳に栓をしておきましょう。しかし、こんな言葉が聞こえてきます。「あぁ、失われた命の数々は本当に救えぬものだったのだろうか。」フリオニールは精一杯やってますが、こういう一言がグサッと刺さりますよ。あのときああしていれば・・・なんて考え出したら切りがないですが、ヨーゼフやリチャードの命はフリオニールの機転一つで救えていた可能性は0ではありません。傍目にはわかりませんが、この言葉がレオンハルトの耳にどう聞こえたのか、気になるところです。あのとき黒騎士にやられず、四人が揃っていたら・・・大戦艦はボーゲンの指揮のもと着工が遅れ・・・死人の数は少なくてすんだ可能性が・・・。フリオニールにとっては、これ以上の犠牲を食い止めるための戦いですが、レオンハルトにとってはまだ自分の力を誇示するためだけの戦いなんでしょうか。一度、力で人を制したレオンハルトに、力におびやかされた人の後悔が理解できるものなんでしょうか。自分の殺した何千何万もの人の悲しみを認めてしまったら、レオンハルトの心も潰れてしまうでしょうけどね。この歪んだ感覚を生み出してしまう戦争というシステムは、なんというか、誰にとっても辛いですね。