フィンの宿敵パラメキアの皇帝を叩きのめし、竜巻による災害を未然に阻止したフリオニールは、ヒーローとしてフィン王国に凱旋帰国しました。エジプトから戻ったナポレオン将軍のごとく国民総出で出迎えてくれること間違いなしです。若き英雄・フリオニールここにあり。歓喜に沸く民衆が竜巻から帰ってくるフリオニールを取り囲み賞賛の声を届ける・・・といったシーンは全てカットされましたが、きっとそんな感じだったはずです。多分。
帰ってきたフリオニールにまず最初に労いの言葉をかけてくれたのはもちろんヒルダ王女でした。
フリオニールたちの勇気は永遠にフィンで語り継がれることが決定し、伝説の人物の内定をいただいた状態になりました。まだフリオニールは健在ですので、現状で「生きた伝説」ということになります。そしてフリオニールの子孫たちはロトの勇者として後年この大地がまた悪に侵食されたときには、再び立ちあがり脅威を滅する存在となるのでした。いやー、この話がドラクエ1,2につながっていくなんてびっくりな話です。ドラクエ3のときは「そして伝説へ・・・」というサブタイトルの意味が最後のエンディングで明かされて鳥肌がたったもんです。FF2はサブタイトルが特にないようなので、フリオニール伝説がどのような意味を持っているのかまだわかりません。後続のシリーズで語り継がれているといいですね。それが適わなくても私の中で彼の伝説は語り継がれるでしょう。王女の寝室での出来事などはそれはもうすごい武勇伝です。オリエンタルラジオばりです。
さて、城下ではやはりフリオニール祭りが開催されているらしく、たくさんの人がフリオニールを拝み奉りに城に集まっているのだそうです。一度でいいからやってみたいですよね。城のテラスから城下の広場に集結した民衆に向かって「皇族のようにお手振り」とか「アジテーション演説」とか。それでフリオニールの挙動一つ一つにワーっと歓喜の声が響き渡るのです。腕を振り上げれば民衆が鼓舞し、口を開けば民衆が涙するのです。英雄の醍醐味なのです。
興奮の坩堝と化した城内では、祝勝のダンスパーティーが執り行われることが決定しました。この城には舞踏会用の部屋が用意されていないため、踊るのはなんと王座のある広間です。なんかアラビアンナイトに出てきそうな中東の王国だったら、王座の前で踊るなんてのもイメージできますが、実際の洋風建築のお城だとどうなんでしょうね。私の中のシンデレラのイメージではやっぱり舞踏用の大きな一室が別にあって、たくさんのカップルが踊りながらクルクルまわっているのですが、ダンスエリアより一段高い位置に王族用に座席が用意されてる気もしますね。踊りつかれたら座りたいですもの。それってやっぱり王座なんでしょうか。いまいち宮廷内の部屋の構成の感覚が掴めません。部屋数とLDKで表してもらいたいもんです。謁見の間とか大臣の私室とか大広間とか、身近にないものがあふれてます。
ふと思ったのですが、中世ヨーロッパをモチーフにしたRPGに登場する王様って、玉座の間を普通に一般開放していて、みんな気さくに勇者たちの話を聞いてくれますよね。実際のところあれってどうなんでしょうか。ローレシアの王子に会ってくれるのは理解できます。王国間でいろいろ政治関係があるでしょうから。あと王様の勅命で世界を守る旅を続けている勇者に会ってくれるのも、まぁわかります。エジンベアはひどかったですが。でも、主人公が身分を隠したり、勇者の自覚がない状態でも、わりと王様のもとまですんなり通してくれる気がします。これはきっと王様の職務の一つに「セーブ」があったからでしょう。最近のドラクエは教会ですけど、国という政治的な機関と教会という宗教的な機関がまだ仲が良かった頃、神様(ゲーム開発会社)から与えられた役務である「セーブ」は両機関で共同してその執行にあたっていました。しかし、徐々に両者の力関係に差が出て、不協和音を放つようになると「セーブ」を独占しようという動きが出てきたのです。これは中世ヨーロッパ史からも読み取れることだと思います。で、かつて王権が強かった時代には「ふっかつの呪文」や「ぼうけんの書」が王様の権限として扱われていたのです。多分ドラクエ4ぐらいでその力関係が逆転して「セーブ」に関する利権は教会側に独占されている状況です。カノッサの屈辱です。でも、そのうち私腹を肥やす教会の体制に反旗を翻す運動が起こるかもしれません。そう宗教改革ですね。ドラクエ8にもその影が見え隠れしているような、いないような。とにかく、王様が気さくに民衆と触れ合うのは「セーブ」という宗教的な儀式に由来する文化というのが私の仮説です。
さて、このパーティーの主役フリオニールとその一行にもそれぞれダンスのパートナーが必要となります。ここは仮面舞踏会のような身分を隠して自由に踊れるようなパーティーではないので、ヒルダ王女の手をとって「Shall we dance?」というわけにはいきませんでした。血統という壁が立ちはだかっているので、ヒルダ王女はゴードンと踊ることは仕方ないとして、フリオニールの相手は同僚のマリアでした。マリアなんて妹みたいな存在ですから、一緒にダンスしていても特にドキドキしません。やっぱり、アメリカのハイスクールの好きなあの子をダンスパーティーに誘うあのトキメキが欲しいところです。
ところでガイとリチャードの姿がないのはいいとして、一人ぽつんと壁の花になっているレイラさんの姿が目に入ってきます。女海賊出身としては宮廷での気取った社交ダンスなんて参加できないのか、あるいはあまりいい男がこの場にいないのでふてくされているのかもしれませんね。まぁ、FF2ではいい男はみんな死んでいってしまいましたからね。スコットやミンウさんが生きていれば、画面ももっと華やかになったかもしれないですね。ヨーゼフがいたら・・・まあ、あれですけど。ちょっぴり寂しそうなレイラさん。まさかマリアと踊るフリオニールの姿をじっとみつめていたりはしないですよね。
そんな盛り上がるパーティー会場に異音が響き渡ります。「伝令!伝令!ダークナイト(レオンハルト)がパラメキアの皇帝に即位しました!」妹のマリアとうかれてダンスを踊っていたフリオニールは突然のことに度肝を抜かれてしまいました。兄のレオンハルトの方がそんな間に皇帝陛下におなり遊ばされたというのです。ということは、今、目の前でキョトンとしている娘は皇帝の妹であり、皇族という扱いになるのでしょうか。幼馴染の二人との間に一気に身分の壁ができた瞬間でした。
っていうか、皇帝っていうポジションは、世襲制が多いと思っていたのですが、そういうもんじゃないのでしょうか。民衆が選挙で選ぶもんでもないし、これはやはり亡き前皇帝がレオンハルトの活躍ぶりを評価し、世継ぎに大抜擢したということに違いないと思います。前皇帝はフリオニールが打破したばかりですから、おそらく遺言でもしたためておいたのでしょう。やばい、ここにきてまたレオンハルトとの競争で差がついてしまいました。
どういった経緯があってか、レオンハルトはフィンの敵国パラメキアで功をなして、飛ぶ鳥を落とす勢いで出世を続けていきました。そのせいでボーゲン将軍は負け組として地位を低下させてましたね。その一方で、フリオニールは反乱軍の一員としてミスリルをフィンにもたらすという功績でヒルダ王女の覚えもよい期待の新人状態でした。しかし、大戦艦の発進を許してしまったことで一度レオンハルトとの出世競争に差をつけられてしまいます。ダークナイトを名乗るレオンハルトの指示で、アルテアをはじめフィン国領の都市は大規模な空爆に見舞われ、フリオニールの反乱軍内の評価が失墜します。その後なんとか大戦艦の破壊に成功して、ヒルダ王女救出とあわせてフリオニールは面目を躍如します。今度はレオンハルトがパラメキア内で責任を問われることになったはずですが、この男はヒルダ王女を事前にすりかえておき、フリオニールに一杯食わせます。しかも再度本物のヒルダ王女を使ってまんまとフリオニールを地下牢に閉じ込めることに成功します。失敗してもフォローがよかったので、ますます株は上がっていったと推測されます。この時点でパラメキア前皇帝も遺言的なものを用意していたのではないでしょうか。前皇帝に皇子がいたのかどうかは特に語られていませんが、なんとなくいなかったんじゃないかと私は思っています。仮にいたらこんなにはやくレオンハルトの即位はならず、ダークナイト派と皇子派に分かれて、皇位継承を巡った内紛になるってもんですから。あと、あの能面のような冷たい顔をした男が、なんとなく女性を好むようにみえなかったのでした。男色家とまではいいませんが、嫁ぎ手を選り好みしそうな気がします。若そうでもあったし、まだそれほどパラメキアの有力者も皇太子誕生を急かしていなかったのかもしれませんね。フリオニールがその前皇帝を倒して、国内の英雄になったと同時に奇しくもレオンハルトはさらなる高み「国家元首」たる皇帝の座に着いてしまったのです。ヒルダ王女に今すぐ婿入りでもしない限り、レオンハルトとは対等になれません。
そんな手練手管に長けたレオンハルトは軍隊を編成して、さらにフィン国で虐殺行為を開始したとのこと。戦争にもね、ルールってものがあるわけですよ。日本の戦国時代に敵国だからといってむやみやたらに相手国の農民を殺さなかったりしたように、国同士の戦争では予め戦争についての取り決めが両国の首脳の間で取り交わされることが多いのです、たしか。レオンハルトのやっていることは、もうその戦争の枠を超えた悪ですよ。いや、戦争自体が悪っちゃ悪ですが、ルールのない何でもありな野蛮な戦争ともなれば、そりゃもう国家の核たる民衆の疲弊度はうなぎのぼりです。町は焼かれ、蔵は抜かれ、女は犯され、子は殺され、パラメキアの進軍の後にはぺんぺん草一本残らないわけです。
まぁ、フィン領内にパラメキア軍が虐殺を行うような都市がまだあるのか謎ですけどね。前皇帝の竜巻で主要都市は軒並み潰されていますから。正直、これ以上の戦争を継続する体力はフィンにはないでしょう。
レオンハルトが皇帝に即位したというニュースは、一同を愕然とさせました。多分Yahoo!のニュースにもトップ見出しになったはずです。ゴードンにいたっては、もう何を言っていいのかわからず、ついついレオンハルトの名前だけ呟いてしまったものの、その後が続かないという情けない状況です。
この場のどれだけの人がレオンハルトがマリアの兄で、フリオニールとガイの幼馴染であることを知っているというのでしょう。その場の雰囲気は凍りつき、英雄として持ち上げられていたフリオニールが一転して、「反逆者の連れ」扱いになってしまいかねない状況です。これはゴードンにとってはある意味、朗報です。ナポレオンのように国家の英雄がその人気で王族を脅かすなんてこともありうるのですから、自らの保身を考えればフリオニールたちへの信望にダメージを与える種は握っておきたいところです。まさかレオンハルトに間接的に政治生命を潰されそうになるとは・・・。ここは今すぐ、マリアの手を振り解いて、レオンハルトとの縁を消し去ってしまいたいところです、政治家的には。暴力団との関連があると週刊誌に報道された芸能人状態といったところでしょうか。
パーティーは見事に腰を折られて中断し、一同は再びパラメキア対策を執るための体制を作りだしました。反乱軍に入った頃からレオンハルトを探していることを知っていたヒルダ王女が心配そうに話しかけてくれています。ちなみにダークナイトがレオンハルトであるということはバフスクで初めて遭ったときからプレーヤーサイドでは暗黙の了解事項でしたが、シナリオ上は薄々におわせつつも、ここにきて初めてはっきりした真実だったのでした。ですから、フリオニールを初め、マリアなんかは特にこのことをすぐには信じられないといった様子なのは仕方ありません。よもや敵の親玉が旧知の人とは。小学校の頃、隣の市に転校して行った木村君がライバル企業の社長に就任した以上の驚きがあるはずです。
こうなったら止められないのが、天然突っ走り系女・マリアさんですよ。兄に直接説得を試みると言い出したら聞きません。敵対する二国の片や皇帝、片や英雄がそうそう直接対話を持つチャンスもないと思いますが、何か勝算があるとでも言うのでしょうか。ロミオがジュリエットの寝室のベランダ下の庭にこっそりと侵入するのとはわけが違います。でも、ノープランで体当たりするのが、このマリアです。兄のことについては盲目的なのです。ブラコンというヤツなんでしょうか。
そんなマリアの暴走的決意を知ってか知らずか、ヒルダ王女がパラメキアの本拠地・パラメキア城のことを教えてくれます。その城は四方を山に囲まれた難攻不落の要塞だそうです。まったくもって不便なところに居を構えたもんです。山なんてお店もなければ、電波も届きにくいし、人口が少なくて、娯楽もあまりないんです。多分、先代の皇帝はそのあまりある魔力を使って山の麓の都市から物品を取り寄せてきたのでしょう。でも、魔力の豊富でない臣民はそんな山の要塞の暮らしを快く思ってなかったかもしれませんね。もう、いっそ出家でもした方がマシみたいな感じで、パラメキア城内には僧侶が多かったりして。ちなみに皇帝が外出するときはもちろん徒歩で山を下ったりしません。交通手段は竜巻です。建物ごと移動できて快適なんです。
じゃあ、人の踏み入ることのできないというその要塞は、生まれたての飛竜にまた頑張ってもらう感じですかね。