ミスリルというキーワードにつられてのこのことミスリル鉱山に入ってしまったルーネスと幼馴染のアルクゥは、「身の程知らず」という言葉を頭に浮かべながら、アンデッド系モンスターの餌食となって全滅しました。新しい街に入ったら、まずくまなく歩くというのが私の流儀です。ミスリル鉱山なんて、町の暮らしを支える一番のランドマークじゃないですか。だというのに、踏み込んだ途端にこの始末です。カズスという町はなんという意地悪か。私としてはミミックの入った宝箱を開けた気分です。呪われてザマーミロとまではいいませんが、もうちょっとミスリル鉱山を見て回りたかったものです。ひょっとしたら、よそ者が勝手にミスリルを持ち去らないように、わざとモンスターを放っているとか!?ミスリルともなれば、中々の希少価値がありそうですから、松茸の群生地に土地の持ち主が有刺鉄線を張り巡らせる感覚なのかもしれませんね。もちろん、ルーネスはあわよくばミスリルの原石の一つや二つ勝手に持ち出す気満々でした。そんな浮ついたやつらから生活の糧を守るためには仕方のない施策だったのかもしれません。初めての町で、町の事情も知らずにあれこれ探りまわるのはマナー違反でしたか。これは失敬。呪いを解いて、町人の許可を得るまでは、鉱山への進入は慎みましょう。
カズスの鉱山を諦めて、シドの助言通り西の砂漠を中央まで歩いていくと、そこには彼の飛空艇が匿われていました。ちょっと不思議なのですが、昔の乗り物って誰かが勝手に乗ってどこかに行ってしまわないようなギミックを持っていたのでしょうか。宿場町で馬を飼葉桶のあるところや水飲み場につないでとめておいた場合、手綱をほどいてしまえばその馬は簡単に盗まれてしまったのでしょうか。駕籠みたいに動力が人の場合は盗みようがないのですが、馬車のような動物を使った乗り物や、自転車のような自力で動かせる乗り物には何らかの盗難対策が必須な気がします。ましてや、飛空艇のようにエンジンがついた乗り物ともなれば、機械文明の黎明期では高価なものだと思います。今の自動車のように鍵でロックするような仕掛けもついていたかもしれません。しかし、特段、シドからそのような持ち主を示すアイテムは受け取っていません。ということは、この時代の人はまだ周りの人を信頼して生きていたのでしょう。敵国の異人ならともかく、まさか同胞が自分のものを盗むわけがないという認識を共通してもっていたのです。それに比べて、現代は世知辛いですね。マンションの隣室の人の顔すら見えないので、周り中敵だらけです。うちのマンションの上の階の住人には、ときどき本気で敵意を覚えます。
とはいっても、大事な飛空艇が盗まれたり、壊されたり、子供に10円玉で傷つけられたりしたら大変ですから、シドは西の砂漠においてきたんですね。せっかくの乗り物なのに、砂漠に駐車してカズスまでは徒歩なんて、ちょっぴりかわいそう。砂漠に置かれたまま、持ち主が帰ってこない飛空艇は、気持ち車輪が砂に埋もれています。
特に断りもなく、中に入っていくと青い服の女の子が操舵輪の前で物思いにふけっていました。しかし、ルーネスたちの気配に気がついたのか、びっくりした声をあげます。人気のない場所で深刻そうなこの感じは、間違いなく家出少女のそれです。カズスの鍛冶屋・タカの娘とはおそらくこの子のことでしょう。そして、この子はオープニングでみたレフィアその人に違いありません。
レフィアと思しき家出少女は、開口一番「あんた誰よ!」と出所不明な男子二人組のアイデンティティを明確にする作業を開始しました。この口ぶりは、説明書で読んだ通りの「ツンデレ」の片鱗を感じさせます。ここでいうツンデレの定義は「勝ち気でも実は優しい」ぐらいに捉えておいてください。私の知らないところでツンデレの定義については議論はあるらしいのですが、世間一般に流通した広い意味でのツンデレ解釈でお願いします。私の知り合いが「ディズニー版・白雪姫のグランピー(おこりんぼ)はツンデレの始祖」と広言しているのですが、ギャップを利用してキャラクターを造形する手法は、きっともっと昔からあったと思うのです。この間、ウルの酒場でカルメンを踊ってくれる女の子がいましたが、元の歌劇のヒロインの「カルメン」はツンデレでしょうか?ただの男にだらしのない女でしょうか?解釈の幅は、現代では広がりそうです。
「お前こそ誰だよ」とルーネスが反発します。パーティーのリーダーですから、ここはガツンとぶつかっておかないといけませんね。「俺たちがシドに借りたんだぞ!」と物証は特にないけど、権利を主張してみました。
すると、必然的にレフィアが名乗らなければならなくなりましたので、命名画面に移行します。上画面には、レフィアの説明がでてますが「鍛冶屋の娘」であることはいいとして、「厳しい修行に耐えかねて家出がち」というネガティブな情報が満載です。もっとこうツンデレーションな性格付けをここでは強調してほしかったのですが、忍耐の足りない女の子みたいな紹介のされ方になってしまいましたね。なまじ顔がきれいでおしゃれっぽいので、逆に遊んでばかりの怠惰な子という印象を植え付けてしまいかねません。
デフォルトのまま、レフィアと名付けられた女の子は、鍛冶屋としてこの飛空艇の修理に参加していたことを主張し始めました。どうも、シドの飛空艇には故障個所があったのですね。その修理がてらカズスによって、鍛冶屋の親子に修理を任せていたら、町人と一緒にジンに呪われてしまったと。レフィアが家出して作業に遅延がでていなかったらあるいはシドは・・・。まぁ、とりあえずレフィアは修業中とはいえ、鍛冶屋のスキルはそこそこ身についているらしいです。「紅の豚」のフィオ・ピッコロ嬢ほどモノ作りに情熱は持ってないかもしれませんが、女だてらに鉄器を叩き上げるとはおそれいります。
両者の自己紹介にかこつけたレフィアの導入部を終え、真面目なアルクゥがいきなり本題を持ってきます。ルーネスとレフィアだけだと、喧嘩したり、ふざけたりして話が進みませんから、ここはアルクゥに弛緩した空気を締めてもらわなければなりません。まぁ、銀魂の万屋トリオでいうところの「新八」ですね。暴走を止めるツッコミは、時としてストーリーをレールに戻してくれます。惜しむらくは、アルクゥは博識で通っているのにメガネをかけていないところです。まだ新八になりきれず、弱虫なところが顔をのぞかせるのはメガネがないからでしょう。メガネというアイテムについてはジョブチェンジの際の考査に入れておかないといけないでしょうね。
とにかく、家出少女・レフィアは、カズスの町では手に入らなかったミスリルの指輪の残された手がかりです。ジンの呪いの対抗策について、この子から情報をもらいましょう。
すると、先ほどまで飛空艇の部品を作っていたと息巻いていた少女はシュンとしおれて、ミスリルの指輪は持っていないし、腕が未熟で作ることもできないと告白し始めました。彼女が修行をまじめにこなしていたら、カズスは救われたかもしれない・・・という空気がその場に流れて、かなり気まずい感じです。よもや、故郷の命運が自分の鍛冶技術とこれほど関連するとはレフィアも考えなかったでしょう。遊びたい盛りの年頃の女の子の肩には、ちょっと荷が勝ち過ぎる気もしますね。されど、責任感はいっぱしに感じているレフィアは、やはり優しい子なのでしょう。
しかし、一ついいことを思い出すレフィア嬢。昔、お父さんであるタカは自分で作ったミスリルの指輪をサスーン城主に献上したことがあるとかなんとか。王様に腕を認められて、装飾品を献上するなんて職人冥利につきるってものです。タカという鍛冶屋は、スミス、トブールときたFFシリーズの名鍛冶屋の系譜を着実に継いでいる存在のようです。しかも、メインキャラクターの一人・レフィアの父ですから、その扱いは上々です。武器防具を語る上で欠かせない存在のはずの鍛冶屋への注目度はドラクエよりも高いですよね。ジパングからアレフガルドに落ちた男とかロンガデセオのおしゃれな鍛冶屋とか、端役過ぎて名前までは貰えてないのです。
ともかく、修行をさぼっていたおかげでレフィアがユーレイにならなくてよかったよかった。最悪、ジンの呪いは解けなくても、世界を守る4人は無事です。カズスの人たちやシドには悪いですが、何らかの事情でサスーン王からミスリルの指輪が借り受けられなかった場合は、クリスタルの啓示を優先させて世界を救う旅路にでましょう。その場合、父親がユーレイのままなレフィアは必ず渋るでしょうから、いかに言い包めるかがルーネスの腕の見せ所です。
そんなわけで、着々とパーティーのメンバーを増やしたルーネスは次回、飛空艇に乗ってサスーン城を目指す所存です。それぞれのメンバーの動機づけが
ルーネス「クリスタル様のお言いつけ」
アルクゥ「おばけなんてないさ」
レフィア「お父さんがユーレイ」
とバラバラではありますが、目指すところは同じくサスーン城です。ん?あれ?アルクゥってひょっとしてもう目的を果たしていないだろうか?なんでルーネスについてきてるんだ、この子は。友達の少ない子。